グループ法人税制について

 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が制定されました。
グループ法人税制とは、会社法、連結納税制度・組織再編制度等が背景となって、分社化・完全子会社化による企業グループが形成され、一体化運営がなされている状況を踏まえて制度化されたグループ内取引等に関する税制度のことです。
 グループ法人税制は、完全支配関係を有する法人をグループとして選択適用である『連結納税制度』と強制適用である『グループ法人単体課税制度』に分類されますが今回は『グループ法人単体課税制度(以下、グループ法人税制といいます。)』をクローズアップします。
 グループ法人税制の適用対象法人とは100%グループ内、一の者(個人である場合はその者と民法第725条に定める親族等特殊関係にあるもの等を含む)が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係、いわゆる完全支配関係のある法人です。
 具体的には以下のような取引がグループ法人税制に該当します。

@ 一定の資産(※1)の譲渡損益を、グループ外へ移転した時まで繰り延べる。
※1一定の資産とは固定資産、棚卸資産たる土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産で以下
に掲げるもの以外のものをいいます。
   ○売買目的有価証券
   ○譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
   ○その譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

A グループ法人内の寄付金について、寄付金支出法人において全額損金不算入するとともに
寄付金受領法人において全額益金不算入とします。
  なお、受贈益の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってされるかを問わ
ず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見
本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの
を除く)を受けた場合におけるその金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価
額又はその経済的利益のその供与の時における価額によるものとされています。

B グループ内の内国法人からの受取配当金について全額益金不算入とします。また、グループ
内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合は、その譲渡損益を計上しないこと
とし、現物分配(みなし配当を含む)については、譲渡損益の計上を繰り延べ、源泉徴収等を行
わないこととなります。

C 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る以下の制度については、資本金の額
もしくは出資金の額が5億円以上の法人、相互会社(外国相互会社を含む。)又は受託法人との
間にこれら法人による完全支配関係がある普通法人には適用しないこととなります。
   ○軽減税率
   ○特定同族会社の特別税率の不適用
   ○貸倒引当金の法定繰入率
   ○交際費等の損金不算入制度における定額控除制度

このグループ法人税制は大企業にのみ影響を及ぼすものではなく、中小企業にとっても非常に注意すべきものとなっています。
また、Bのうち受取配当の益金不算入とCの中小企業特例の適用除外については平成22年4月1日以後開始事業年度から適用されており、多くの企業がすでに適用されています。
その他のグループ税制についても平成22年10月1日以後から適用されることとなっています。詳しくは以下を参照してください。
『平成22年法人税関係法令の改正の概要(国税庁)』