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2018年

こんにちは!中嶌会計事務所です。今年も早いもので、12月となりました。
なにかと忙しい年末、もうすぐ寒波もやってくるようです。
体調管理をしっかりと行い、気持ちよく年を越す準備をしておきましょう。
 今月の大ちゃんニュースのテーマはタイムリーな話題となりますが、『年末調整の注意点(配偶者控除等申告書の様式変更について)』となります。

◆ 今年の年末調整の注意点
 まず、今年は配偶者控除等の改正に伴って下記の3点に注意が必要となります。
・「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に分かれました。
・配偶者控除の適用を受けるにあたっては、「配偶者控除等申告書」の提出が必要となります。(配偶者がいる場合には必ず提出しましょう。)
・新しくなった「配偶者控除等申告書」には給与所得者本人とその配偶者の所得の見積額と、所得の区分判定を記載します。
では、上記の注意点についてもう少し詳細を確認していきましょう。

◆ 「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に
 様式の変更に伴い、従来の「配偶者特別控除申告書」が廃止となり、新たに「配偶者控除等申告書」が設けられ、配偶者控除・配偶者特別控除額を算出できる様式に変更となりました。図解で説明するのであれば下図のようなイメージとなります。



◆ 配偶者控除の適用を受けるにあたっては、「配偶者控除等申告書」の提出が必要に
 昨年までは配偶者特別控除を受ける場合にのみ、「配偶者特別控除申告書」の記載が必要でしたが、今年からは配偶者控除又は配偶者特別控除のいずれかを受ける場合には、「配偶者控除等申告書」の記載及び提出が必要となります。

◆ 新しくなった「配偶者控除等申告書」には給与所得者本人とその配偶者の所得の見積額と、所得の区分判定を記載
 ここでは実際の「配偶者控除等申告書」の様式を使って、書き方やポイントを説明していきましょう。
保険料控除申告書については例年と同様の記載方法となりますので書き方については割愛させて頂きます。



@ あなたの本年中の合計所得金額の見積額について
 ここでは自分自身の本年中の合計所得金額の見積額を記載します。その際、B(合計所得金額の見積額の計算欄)の左側の欄を使用し、合計所得金額の見積額を計算してください。
注意点としては、収入金額と所得金額について理解をしておく必要があります。
収入金額は※1(a欄)に記載しますが、金額としては「源泉徴収票の支払い金額」を記入します。直近の源泉徴収票や給与明細書を参考にして金額を見積もるのが良いでしょう。
また所得金額は※2(c欄)に記載します。所得金額とは収入金額から給与所得控除額を控除した金額をいい、配偶者控除等申告書の裏面「3 所得の区分」の【@給与所得】を参考に計算した金額を記入してください。記入が終わり、合計額の記載ができれば、その金額を@の一番左の欄に転記し、その金額を基に区分を判定しましょう。
ちなみに、所得金額の上限は1,000万円となっており、1,000万円を超える場合はその時点で配偶者控除の適用はありませんので、注意が必要です。

A 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額について
 この部分には配偶者の本年中の合計所得金額の見積額を記載します。B(合計所得金額の見積額の計算欄)の右側の欄を使用し、合計所得金額の見積額を計算してください。
記入にあたっては、配偶者の本年中の収入金額が必要となりますので、大まかな金額を事前に確認しておきましょう。
ここでも@と同様に収入金額を(a欄)に、所得金額を(c欄)に記載し、合計額をAへと転記します。また、@と同様に転記した金額を基として所得金額を判定してください。
注意点としては、大きく2点です。
一つ目は配偶者の所得がない場合には収入欄及び所得欄に必ず「0」と記載すること。この記載がければ経理の担当者は記載を忘れているのか、所得がないのかの区別がつかなくなってしまいます。二つ目は所得金額が38万円以下の場合は配偶者の年齢が70歳以上か未満かによって区分が変わることです。この部分については配偶者控除等申告書を慎重に読めば、間違えることはないでしょう。

C 控除額の計算について
 区分の判定ができたら、C欄の控除額の計算欄にて配偶者控除額又は配偶者特別控除額を算出していきます。左側の区分Tがあなたの所得の区分で、上側の区分Uが配偶者の所得の区分で、交差するところが配偶者控除額又は配偶者特別控除額となります。
 例えば、夫の所得が350万円(区分TはA)で配偶者の所得が100万円(区分UはC、95万円超100万円以下)であれば、配偶者特別控除として26万円の控除が受けられることとなります。

D 控除額を記載
 C欄に従って算出した配偶者控除額又は配偶者特別控除額を転記します。

 以上で配偶者控除等申告書の記載は終了となります。

◆最後に
 いかがだったでしょうか?
今年から初めて配偶者控除等申告書が導入され、どのように記載していいかわからなかった方もおられたのではないでしょうか?配偶者控除等申告書の提出がないと、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用が受けられなくなるため、年末調整による還付金が少なくなってしまう恐れもありますので、配偶者のおられる方については必ず提出してくださいね。(もちろん、自分で確定申告します。という方については必ずしも提出する必要はありません。)また、配偶者の合計所得金額の見積金額についてはあくまでも見積もりですので、実際には金額が上下するケースがあります。従って、実際の配偶者の源泉徴収票を確認して、見積額が実際の給与所得よりも大きかった場合には確定申告をすることで還付される金額が発生するかもしれませんし、逆に配偶者の所得を少なく見積もっていた場合には扶養是正の対象となり税金を徴収される可能性があります。
 配偶者控除等申告書に限らず、年末調整の資料の記載方法がわからない方、それに付随するご質問のある方は中嶌会計事務所までお気軽にご相談ください!

 こんにちは!中嶌会計事務所です。昨日は台風21号が猛威を振るいましたが、大丈夫だったでしょうか?被災された方々には心からお見舞い申しあげると共に復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈りいたします。
 今月の大ちゃんニュースのテーマは『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小宅の特例」という。)の改正』について。の第2弾となります。
前回の記事で小宅の特例の大きな概要については書いておりますので、まだお読みになっておられない方は見て頂くとして、今回は改正論点の2つ目、貸付事業用宅地等について内容を確認していきます。

◆貸付事業用宅地等とは(改正前の要件)
 前回の記事でも少し触れておりますが、貸付事業用宅地等とは下記の要件を満たす宅地等のことをいい、この要件を満たせば対象となる宅地等につき200uを限度として相続税評価額の50%の減額が受けられることとなります。


 改正前の貸付事業用宅地等については相続開始前に地価の高い賃貸不動産を購入して一時的に現金を不動産に転換し、借入を行い資産を圧縮して相続税負担を軽減(債務は相続税の計算をするうえで控除できる。)したうえで、相続税申告後すぐに売却して相続税を軽減する例が多く見受けられたという問題点があり、それが改正の一因となっているようです。

◆改正論点(適用要件の見直し)
 改正により、上記の要件はそのままに相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等が貸付事業用宅地等の範囲から除外される([1]原則)こととなりました。
 ただし、相続開始の日まで3年を超えて事業的規模による貸付事業(準事業以外のものをいう。)を行っていた被相続人が貸付事業の用に供しているものは除外されないこととされます。([2]例外)したがって、既に事業的規模による貸付事業を行っている方は見直しには該当しません。また、経過措置として、平成30年4月1日〜平成33年3月31日までに開始する相続において平成30年3月31日までに貸付を行ったものは相続開始前3年以内の貸付であっても適用対象となります。([3]経過措置)


◆事業的規模とは?
 事業的規模とありますが、具体的にどんなものが事業的規模として認められるのでしょうか?これに関しては所得税法の基本通達を根拠とするようです。


 こんにちは!中嶌会計事務所です。6月になりました。関西も梅雨入りし、すっきりしない天気の日が続いておりますが、今月も頑張って参りましょう!
 さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小宅の特例」という。)の改正』について。
小宅の特例といえば、相続税の課税価格の減額規定として最もメジャーな規定ですが、行き過ぎた節税が多かったというのも事実。
 そういった経緯を経て、平成30年4月1日以後に相続又は贈与により取得する財産に係る相続税について改正がなされることとなりました。

そもそも小宅の特例とは
 個人が死亡した場合、その者が死亡の時点で有していた財産をその時点の価値で評価し、その評価額に対して税率を乗じることで、相続税の計算を行うこととなります。
 その場合、その者が生前に有していた家屋の敷地の用となっていた土地についてももちろん相続税の課税対象となります。
簡単な例を使って説明してみましょう。
 【例】相続税の納付税額を求めてみましょう
・死亡者(甲)
・配偶者はすでに亡くなっている
・相続人は甲と同居している子供一人(A)
・財産は居住用家屋(評価額:5,000万)、居住用家屋の土地330u(評価額:5,000万)
・Aは申告期限までに上記の宅地を相続により取得し、引き続き居住の用に供している

【解答1】(小宅の特例の適用がない場合)
(1)課税価格 5,000万+5,000万=1億
(2)基礎控除 3,000万+600万×法定相続人の数(本例においては1人)=3,600万
(3)課税遺産総額 (1)−(2)=6,400万
(4)納付税額 (3)×30%−700万=1220万

【解答2】(小宅の特例の適用がある場合)
(1)課税価格 (5,000万+5,000万)−4,000万(小宅の特例)=6,000万
(2)基礎控除 3,000万+600万×法定相続人の数(本例においては1人)=3,600万
(3)課税遺産総額 (1)−(2)=2,400万
(4)納付税額 (3)×15%−50万=310万

 上記の例から小宅の特例の適用を受けるか否かによってその減税効果が910万円にもなることがわかります。ということは小宅の特例の適用がなければAさんは多額の相続税を払えず、甲さんの死亡後居住していた土地と家屋を売却することになっていたかもしれません。
つまり、小宅の特例は『@生活基盤となっている土地をA親族に対してB相続等する場合については相続税の負担を軽減してあげよう』という趣旨で創設された規定なのです。
なお、適用を受けるための大前提は上記の番号を付した要件の通りです。
@被相続人等の事業用、居住用の宅地であること(下記に詳しい説明有)
A死亡した者と親族関係にある人が土地を取得する場合でなければ適用はありません。
B相続・遺贈での取得でのみ適用があり、贈与による取得については適用はありません。

小規模宅地等(以下「小宅」という)の種類について
 小宅はその宅地の目的に応じて4種類に区分されます。
ここではざっくりと4種類について確認していきましょう。

(※1)課税価格に下記の割合を乗じた金額が減額金額となります。(先ほどの例では目的が被相続人の居住用であった為、5,000万円の80%相当額である4,000万円が減額金額となります。)
(※2)必ずしも土地全体につき適用を受けられるわけではなく、面積につき限度が設けられています。
(※3)被相続人が土地を使用している場合に加えて、被相続人の生計一親族(被相続人と同じ財布で生活している者)が土地を使用している場合(被相続人からの使用貸借が前提)を含む。

改正の内容は?
 今回の改正の対象となったのは、特定居住用宅地等・貸付事業用宅地等になります。
ボリューム的にすべての改正の内容について触れることは難しいので、貸付事業用宅地等については次回に回すことにします。
具体的な改正についてお話する前に、適用対象者ごとの要件について触れておきましょう。
<特定居住用宅地等の適用対象者ごとの要件について>
特定居住用の特徴については既出の図解で説明したとおりですが、土地を取得した者(親族に限る)であれば誰でも適用が受けられるわけではありません。
取得者別に要件が設けられているのですが、その内容を確認していきましょう。

まず、上記の図解からわかる通り、特定居住用宅地等としての適用が受けられる可能性がある人は4種類しかいません。(配偶者、同居親族、別居親族、生計一親族)
このうち、配偶者については最も優遇されるべきである者であることから特段要件は存在せず、取得しさえすれば特定居住用宅地等の80%の減額の適用を受けられます。
ただし、それ以外の者が減額の適用を受けるためには基本的に申告期限までにその土地を相続・遺贈により取得し(※1所有要件)、かつ、居住し続けている(※2継続要件)必要があります。
なお、別居親族については最も厳しい要件が課せられており、(※3)の持ち家要件や(※4)の同居親族要件を充足しなければ適用を受けることができませんでした。(被相続人と離れて暮らしていることも想定されるため、継続要件については優遇される)
<改正の内容について>
 さて、図解からもおわかりかと思いますが、今回の改正では(※3)の持ち家要件がより厳しいものとなりました。今までは相続開始前3年以内にその者又はその者の配偶者の所有する家屋に居住したことがなければ要件がクリアとなっていたわけですが、今までの要件から一定の者が除外されることとなりました。
一定の者とは下記の通りです。
 @相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係にある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
 A相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
言い換えれば、上記のいずれかの要件に該当する者は改正前の持ち家要件を満たしていて
も改正後は別居親族として小宅の特例の適用が受けられないこととなったのです。

改正の背景
 上記の改正の背景には、本来持ち家があって別居親族として小宅の特例を受けられないはずの人が、相続開始前にその持ち家を親族などに売却・贈与等することにより「持ち家無し」となることによって適用可能な状態を意図的に作出するという事例が増加したためと言われています。

最後に
 いかがだったでしょうか?
文中でもお話したとおり、小宅の特例は相続税の課税価額を減額する有用な手立てとなりますが、本来適用を受けることのできない人が適用を受けるために意図的な行為を行うというのは行き過ぎた節税と言われてもしょうがないですね。
 相続税については改正が入ることによって規定の内容もどんどん複雑化しており、適用の有無によって税額が大きく変わってくるのも特徴です。
 自分や親族に相続が発生した時の相続税の試算はできていますか?またその対策は万全でしょうか?不安を感じる方はどんな些細なことでも結構ですので、中嶌会計事務所までお気軽にお問い合わせください!

 2018年も年が明けて、早いもので3か月が経過しました。
今年の冬は非常に寒かったように思いますが、暖かくなるのも早く、佐保川の桜も見ごろを迎えております。
今月の大ちゃんニュースのテーマは「非上場株式の納税猶予制度(新事業承継税制)」について。
従来から相続税・贈与税には事業承継に関する規定が設けられておりましたが、実際に規定を適用するにあたってはハードルが高く、現実的には使いづらいものでした。そこで、平成30年度から納税者にとってより使いやすい規定とするべく税制改正が行われることとなりました。具体的に変わったところを従来の規定の内容を踏まえて解説していきましょう!

◆ 多様な事業承継税制
 現在、我が国の税法の規定では各種事業承継規定が設けられています。
1.農地等の納税猶予(贈与税・相続税)…農業の事業承継
2.非上場株式の納税猶予(贈与税・相続税)…法人の事業承継
3.山林の納税猶予(相続税)…林業の事業承継
4.医療法人の持分についての納税猶予(相続税・贈与税)…医療法人の事業承継
もちろん業種の違いはありますが、共通する目的は『事業承継の円滑化』です。
親世代から子世代に事業(株)や財産(農地)を承継するにあたっては、得てして莫大な相続税・贈与税が課税されることとなります。
相続や贈与といった事象により、税金が事業承継を阻害することのないように事業承継税制が創設されることとなったのです。

◆ 従来の事業承継税制(非上場株式の納税猶予)との相違点
 非上場株式の納税猶予については、平成25年度の改正により抜本的な見直しがされることとなりましたが、それでもなお適用要件が厳しく使いづらい一面がありました。
そこで、今回の平成30年4月1日より現行の制度に10年間限定の特例措置が拡充され、納税者にとってより使いやすい規定へ抜本的に改正されることとなりました。
 では、下記の図を使って具体的にどのように変わったのかを従来の規定と比較して説明していきましょう。

(注1)まず、大きな変更点として、対象株式数と猶予対象となる評価額が大きく拡充されています。現行の制度では相続した株式のうち発行株式数の3分の2に達するまでの株式数が対象となり、さらにその評価額の80%が猶予される税額となっていましたが、この改正により相続した株式の全てが対象となるとともに、その評価額の100%が猶予されることになりました。つまり、実質相続や贈与で取得した株式の評価額に対する税額が全て猶予の対象となるわけです。これはかなり大きな変更点と言えるでしょう。

(注2)次に雇用確保要件ですが、従業員が少ない中小企業にとって5年平均の従業員数が80%を下回らないようにしなければならないというのは厳しいものであり、実はこの要件も現行の規定においてかなりネックになっていたようです。(因みに、要件が満たされないこととなった場合には認定が取り消され、猶予税額の全額の納付が必要となります。)特例制度においては5年平均の従業員数が80%を下回った場合でも、認定経営革新等支援機関(※)の意見が記載されている「下回った理由」を記載した書類が提出された場合には、認定の取消がされないこととなります。つまり、雇用確保要件が実質的に撤廃され、ネックとなっていた要件もクリアできることになったわけです。(※)税理士事務所など

(注3)現行の制度では、代表者であった同族関係者間で筆頭株主である先代経営者からの贈与に限られており、特例制度では先代経営者の要件はそのままに後継者となる人が代表者以外の者から取得する非上場株式についても上記(注7)の期間内に申告書の提出期限が到来するものについては、本特例の対象とされます。言い換えれば、役員になったことの無い株主でかつ親族以外の人から相続・贈与等により取得した非上場株式についても適用が受けられることとなり、相続や贈与で非上場株式を渡す側の要件が緩和されることとなります。因みに、この要件については現行の事業承継税制でも同様に改正されます。

(注4)受贈者(株を取得する者)においても、現行制度では筆頭株主である代表者に限定されますが、特例制度においては一定の計画に記載された代表権を有する後継者で、発行済総議決権数の10%以上を有する上位2名又は3名も対象となり、相続や贈与で非上場株式をもらう側の要件が緩和されることとなります。

(注5)平成29年の改正により、推定相続人又は孫である後継者について相続時精算課税制度の適用が可能となりましたが、特例制度では推定相続人や孫以外の親族や第三者であっても相続時精算課税の適用を受けて非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予の規定を受けることができるようになりました。

(注6)特例制度は、平成30年4月1日から平成35年3月31日までに都道府県知事に提出された、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた適用を受けようとする会社が作成した計画であり、その会社の後継者や承継時までの経営見通し等が記載された特例承継計画の提出を要件として適用を受けることができます。

◆ 事業承継税制適用の大まかな流れ
 次に特例事業承継税制の適用について大まかな流れをお話します。

(1)納税猶予を受けるまで
まずは前提条件として平成30年4月1日〜平成35年3月31日までの間に税理士事務所等の認定経営革新等支援機関の指導又は助言を受けた適用対象法人が作成した特例承継計画を都道府県知事に提出することが要件となりますが、特例事業承継税制の適用を受けるにあたっての入り口は大きくわけて下記の2つです。
@先代経営者その他の者から贈与で後継者に非上場株式の贈与が行われること
A先代経営者その他の者から相続又は遺贈で後継者に非上場株式の相続が行われること

ポイントは非上場株式について贈与を行う場合には、特例承継計画を提出してから平成39年12月31日までに次期後継者に贈与を行い、代表権を譲ることです。
上記の贈与、相続等を要件とし後継者へ経営権が移行したこと等の要件が満たされると、都道府県知事より認定が受けられることとなり、晴れて納税猶予が受けられることとなります。
(2)納税猶予を受け、猶予税額につき免除を受けるまで
 納税猶予の適用を受けると非上場株式に係る贈与税・相続税の課税は猶予され、贈与者や後継者の死亡、次世代への非上場株式の一括贈与を起因として最終的にその税額は免除されることとなります。
因みに上記図解における@´のパターンは贈与税の納税猶予の適用を受け、その後贈与者が死亡し、相続税の納税猶予に切替わるパターンです。
その場合は贈与税の納税猶予税額については免除となり、贈与でもらった非上場株式を相続等で取得したものとみなし、相続税の課税対象とすることとなります。
相続税の課税対象とされた非上場株式は要件を満たしていれば相続税の納税猶予の適用が受けられることになります。
しかし、免除されるからといって何もしなくていいわけではありません。具体的にはちゃんと事業を継続して経営頑張ってます!というのを税務署長に届け出る必要があります。この届出に関しては特例承継期間内であれば毎年、特例承継期間後は3年ごとに行う必要があります。他にも、特例承継期間内に後継者が代表者でなくなる等経営状況の変更があった場合や猶予の対象となる株式を売却などすると猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税の納付が必要となる場合もありますので注意が必要です。

◆ 最後に
 平成30年度より改正される事業承継税制いかがだったでしょうか?現在事業承継をお考えの方にとってはこの機会に是非活用をご検討頂きたい話題となりそうです。しかし、適用を受けるにあたり注意点も多く複雑な部分もあるため、まずは是非一度中嶌会計事務所までお気軽にご相談ください!

 寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
インフルエンザも流行しているようですがインフルエンザウイルスは乾燥した環境を好むようですので、室内の保湿も忘れずにしっかりと行いましょう!
今回のテーマは平成29年度の確定申告からいよいよ導入となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について。以前にも一度お伝えさせて頂きましたが、もう少し具体的な解説をさせて頂きます。

まずは以前のおさらいからしていきましょう。

◆ 医療費控除とは
 自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、年間10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額。)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる制度。 控除できる金額の上限は200万円。 ただし、保険金などで補てんされた場合はその金額を差し引かなければいけません。(※未払い医療費は含まない。)

〈計算式〉
支払った医療費−(注)100,000円=控除額(2,000,000円を限度)
(注)所得金額200万円未満の人は総所得金額×5%を限度

◆ セルフメディケーション税制とは
 健康の維持増進・疾病の予防として一定の取組を行う人が、その年に自分や家族のために購入したOTC医薬品の対価の額の合計が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(88,000円を限度とする。)を総所得金額から控除することができる制度。

〈計算式〉
支払った特定一般用医薬品の対価の額−12,000円=控除額(88,000円を限度)

◆ 医療費控除とセルフメディケーション税制との関係性について
 結局のところ、医療費控除とセルフメディケーション税制はどう違うのか、医療費控除とセルフメディケーション税制の関係について詳しく解説していきましょう。

・医療費控除とセルフメディケーション税制はいずれか選択適用である。(重複適用不可
・どちらの規定も年末調整では適用出来ず、確定申告をする必要がある
・セルフメディケーション税制では、適用を受ける人(確定申告を行う人)が(注)一定の取組を実施する必要がある。(家族全員が行う必要はありません。)
・医療費控除もセルフメディケーション税制もどちらも所得控除であり、税額控除でないため、納めた税金がない場合には税金が還付されることはない。
・医療費控除は最大2,000,000円まで、セルフメディケーション税制は最大88,000円までの所得控除が可能。

(注)一定の取組(いずれかひとつでよい)


なお、一定の取組を証明する書類である領収書又は結果通知表には次の事項の記載が必要である
・「一定の取組」を行った者の氏名
・「一定の取組」を行った
・「健康診断健診」などの事業を行った保険者、その事業者若しくは市町村の名称又は診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名
まず着目する点として、適用できるのは医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらか一方の選択適用となっていますので、有利な方を選択します。
具体例を使って控除額を計算していきましょう。


【設例1】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       60,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     80,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。

【答】
(1) 医療費控除
(20,000円+60,000円+80,000円)−100,000円=60,000円

(2) 医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(60,000円+80,000円)−12,000円=128,000円>88,000(限度額)∴88,000円

(3) 医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒88,000円
  
セルフメディケーション税制が導入される前ですと、(1)の医療費控除額の60,000円しか所得控除されなかったのに対し、今回は88,000円の所得控除ができる結果となりました。


【設例2】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       30,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     40,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。


【答】
(1)医療費控除
(20,000円+30,000円+40,000円)−(注)100,000円=△10,000円⇒0円

(2)医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(30,000円+40,000円)−12,000円=58,000円

(3)医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒58,000円

このケースでは通常の医療費控除額が0となり、セルフメディケーション税制を適用すると控除額は58,000円となります。(セルフメディケーション税制導入前は医療費控除の適用を受けることはできない。)

また、セルフメディケーション税制も医療費控除と同様、年末調整では所得控除をすることができず、確定申告をすることによって初めて適用することができます。
従って、会社で年末調整をしたからこれで終わりというわけではなく、医療費がある場合には、ご自身で医療費控除(セルフメディケーション税制)の適用を受けることができるかを確認することが必要となります。
そのためにも、病院に通院した領収書や薬局で購入したOTC薬品の領収書を捨てずに残しておくことが大切になってきます。

 因みに、ワンストップ特例制度を利用してふるさと納税をしている方についてはふるさと納税分についても申告をする必要があるため、注意が必要です。


◆ 添付書類の改正点(紙提出の場合)
 従来の医療費控除の適用を受けるためには、領収書などの添付が義務付けられていました。しかし、平成29年分以降につきましては、領収書の提出義務がなくなった代わりに医療費の明細書を記載し、提出することが義務付けられました。
改正が入った部分は下記の通りです。



現在は経過措置期間となるため、平成31年分の確定申告まではこれまでと同様に領収書の添付又は提示でもよいこととされていますが、領収書につきましては5年間の保存が義務付けられておりますので、きっちりと保管しておきましょう!


◆ 各種明細書につきまして
 医療費控除、セルフメディケーション税制の明細書については下記のリンク先の資料をダウンロードして頂ければと思います。
【医療費控除の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf
【セルフメディケーション税制の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf


◆ 最後に
 平成29年度に子供がお生まれになった方や、医療費や薬代が例年よりもかかった方についてはこれらの制度を利用することで税負担が軽減できるかもしれません。
医療費控除に関わらず確定申告についてお悩みの方は中嶌会計事務所まで是非是非ご相談ください!

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