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2010年

住宅エコポイントの税務上の取り扱いについて

 住宅エコポイントは、国が定めた一定のエコ基準に基づき住宅を新築または改修をした場合に、工事内容に応じたポイントがエコポイント事務局から買主に付与され、商品や金券等と交換もしくは一定の環境団体へ寄附もしくは追加工事の費用への充当(即時交換)ができる制度です。
まず、法人が住宅エコポイントを付与され商品や金券等と交換した場合の税法の取り扱いについてですが、買主は、エコポイントを付与された段階では何ら経済的利益の付与を受けません。実際に交換をすることによって経済的利益の供与を受けることになるため、商品や金券等と交換したタイミングで収益に計上する必要があります。
一方、本体工事で付与されるポイントを追加工事の代金に充当する「即時交換」を行った場合、買主にはポイント相当代金を控除した金額が工事代金として請求されます。
一見すると、これが工事代金の値引きに該当しそうですが、税務上は値引きとはなりません。
というのも、ポイント相当代金は、ポイント事務局から工事施工者に直接支払われる仕組みとなっていますが、実態は、一度買主にポイント相当代金が付与され、その代金を工事費用に充当したと言えるためです。
また、仮に追加工事が固定資産の取得に該当する場合、エコポイント相当代金は、エコカー補助金等と同様に国からの補助金として圧縮記帳の対象になるものと考えることができますが、この住宅エコポイントは国からの「補助金」ではなく、あくまでも「ポイント」であるため、税務上も補助金と扱われません。結果として圧縮記帳の対象にならないようです。
したがって追加工事により新たな固定資産を取得した場合における取得価額は、ポイントを差し引く前の金額となるとともに、ポイント相当代金は雑収入として収益に計上する必要があります。
また、個人が住宅エコポイントの交付を受けた場合、上記と同様に付与された段階では経済的供与を受けていないため、税務上は何の課税関係も生じませんが金券や商品券等と交換した時点で利益の供与を受けたことになるので1ポイント1円のポイント相当額が一時所得として課税の対象となります。

消費税仕入税額控除の調整措置の改定
(消費税等の仕入税額控除の調整措置に係る適用の適正化)

 消費税法の一部が改定され、平成22年4月1日以後、いわゆる「賃貸マンション等の取得費用に係る消費税の還付に対する制限措置」が適用されることとなりました。具体的には、賃貸マンション等を取得した個人事業者が、課税事業者と免税事業者の使い分けを行うことにより、建物等の取得費用に係る消費税額の還付を受けるというものに対して規制をかけることになります。
 これまでの消費税法では、課税事業者を選択した場合、「2年間免税事業者に戻ることはできない」こととされていましたが、建物等の一定の固定資産を取得した個人事業者については、「3年間課税事業者となることを強制」する法改正を行うことにより、建物等取得後3年間の通算課税売上割合が取得時よりも50%以上下落等(建物取得後3年間で課税売上割合が著しく変動)をした場合には、3年経過時の課税期間において、取得時に還付を受けた消費税の仕入税額控除を調整しなければならないこととするというものです。

 また上記とは別に、資本金1千万円の新設法人に対しても規制をかけることとなりました。
 今回の改定により、次の@、Aの期間中に調整対象固定資産を取得し、一定の条件に該当した場合、一定の期間は免税事業者になることができなくなり、簡易課税制度も適用できなくなります。
よって、一般課税(本則課税制度)により消費税の申告を行うことになります。

@ 課税事業者を選択した場合
  →課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間
A 資本金1千万円以上の新設法人を設立した場合
  →新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間

 上記@、Aの期間中に、調整対象固定資産の課税仕入を行い、かつ、その仕入れた日の属する課税期間の消費税の確定申告を一般課税(本則課税制度)で行う場合、調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から原則として3年間は、次のことができません。

・免税事業者となることはできません。
・また、簡易課税制度を適用して申告することもできません
 (一般課税により消費税の確定申告を行う必要があります。)

 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権等の無形固定資産その他の資産で、消費税等に相当する金額を除いた金額が100万円以上のものが該当します。

詳しいことやその他については、最寄の税務署もしくは当事務所までお問合せください。
詳しくはこちら>>
【消費税法改正のお知らせ(国税庁)】

グループ法人税制について

 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が制定されました。
グループ法人税制とは、会社法、連結納税制度・組織再編制度等が背景となって、分社化・完全子会社化による企業グループが形成され、一体化運営がなされている状況を踏まえて制度化されたグループ内取引等に関する税制度のことです。
 グループ法人税制は、完全支配関係を有する法人をグループとして選択適用である『連結納税制度』と強制適用である『グループ法人単体課税制度』に分類されますが今回は『グループ法人単体課税制度(以下、グループ法人税制といいます。)』をクローズアップします。
 グループ法人税制の適用対象法人とは100%グループ内、一の者(個人である場合はその者と民法第725条に定める親族等特殊関係にあるもの等を含む)が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係、いわゆる完全支配関係のある法人です。
 具体的には以下のような取引がグループ法人税制に該当します。

@ 一定の資産(※1)の譲渡損益を、グループ外へ移転した時まで繰り延べる。
※1一定の資産とは固定資産、棚卸資産たる土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産で以下
に掲げるもの以外のものをいいます。
   ○売買目的有価証券
   ○譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
   ○その譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

A グループ法人内の寄付金について、寄付金支出法人において全額損金不算入するとともに
寄付金受領法人において全額益金不算入とします。
  なお、受贈益の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってされるかを問わ
ず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見
本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの
を除く)を受けた場合におけるその金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価
額又はその経済的利益のその供与の時における価額によるものとされています。

B グループ内の内国法人からの受取配当金について全額益金不算入とします。また、グループ
内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合は、その譲渡損益を計上しないこと
とし、現物分配(みなし配当を含む)については、譲渡損益の計上を繰り延べ、源泉徴収等を行
わないこととなります。

C 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る以下の制度については、資本金の額
もしくは出資金の額が5億円以上の法人、相互会社(外国相互会社を含む。)又は受託法人との
間にこれら法人による完全支配関係がある普通法人には適用しないこととなります。
   ○軽減税率
   ○特定同族会社の特別税率の不適用
   ○貸倒引当金の法定繰入率
   ○交際費等の損金不算入制度における定額控除制度

このグループ法人税制は大企業にのみ影響を及ぼすものではなく、中小企業にとっても非常に注意すべきものとなっています。
また、Bのうち受取配当の益金不算入とCの中小企業特例の適用除外については平成22年4月1日以後開始事業年度から適用されており、多くの企業がすでに適用されています。
その他のグループ税制についても平成22年10月1日以後から適用されることとなっています。詳しくは以下を参照してください。
『平成22年法人税関係法令の改正の概要(国税庁)』

欠損金の繰越しと繰戻し還付について

平成21年度税制改正で、一部を除き不適用となっていた欠損金の繰戻しによる還付が、平成21年2月1日以後終了事業年度の中小企業者等から適用できることとなりました。また、同じく平成21年度税制改正で平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得の金額のうち800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が22%から18%に引き下げられました。
これらの税制改正により前期が黒字申告で税金を納め、当期が赤字申告の場合、当期の欠損金を繰越すかそれとも繰戻し還付請求するかいくつかの点から検討する必要があります。
 まず一つは、還付請求書を提出した場合には「その請求の基礎となった欠損金額その他必要事項について調査する」ことが税法で規定されていますので、調査に時間を要することです。
 二つ目は欠損金を繰越す方が有利だったとしても、その時の資金繰りによっては還付請求をした方が良い場合があります。当期が赤字申告の場合、特に資金が減っていることが予想されますのでその点を考慮しなければなりません。
 そして三つ目は、所得金額によって税額の有利不利をシミュレーションすることです。

ここで例を出して考えてみます。
ある中小法人で前期所得金額は1800万円、法人税額は800万円部分が176万円(税率22%)、800万円を超える部分が300万円(税率30%)とします。そして当期所得金額は△800万円だったとします。また、翌期の黒字金額はA:1800万円の場合とB:800万円の場合の二通りで考えてみます。

欠損金の繰戻し還付金額の計算式は
(還付金額)=(黒字年度の法人税額)×(当期の欠損金額)÷(黒字年度の所得金額) です。

比較表はこちら>>
  
Aの場合は、欠損金を繰越す方が還付金を請求する場合より有利になります。これは還付請求の場合は(黒字年度の法人税額 476万円)×(当期所得金額△800万円)÷(黒字年度の所得金額1800万円)≒212万円の還付金額になるのに対し、欠損を繰越す場合は翌期の黒字額1800万円のうち800万円が欠損金で相殺され課税所得金額1000万円のうちの800万円が18%、200万円が30%課税され法人税額が204万円となり、1800万円の黒字金額が欠損金で相殺される方が節税の幅が大きくなるからです。つまり還付請求する場合は税率が22%部分と30%部分に按分されて還付金額が計算されるのに対し、欠損金を繰越す場合は欠損金800万円を黒字金額から相殺する部分の税率が30%部分となるため節税の幅が大きくなります。
一方、Bの場合、還付金を請求する方が欠損金を繰越す場合より有利になります。これは還付請求の場合は当期所得△800万円が22%部分と30%部分に按分され還付になりますが、欠損を繰越す場合は欠損金800万円を税率18%部分の黒字金額800万円と相殺するため節税幅が還付金を請求する場合よりも小さくなるためです。

以上のことから前期の課税所得金額、法人税額と当期の課税所得金額、法人税額が確定した場合、翌期の損益予想をして30%部分の節税幅がどれくらいかを考慮して有利不利を判断する必要があります。
 還付請求した場合の還付加算金については、その計算期間は還付請求がされた日または欠損事業年度の確定申告書の提出期限のいずれか遅い日の翌日以後3か月を経過した日から、その還付の支払い決定をする日またはその還付金について充当をする日までとなっています。
 なお、欠損金の繰戻し還付の適用があるのは法人税だけで、事業税等の地方税ではこのような制度はなく、欠損金の繰越し額が法人税と事業税等でズレることがあります。

平成22年度税制改正について

平成22年度税制改正は主に以下のようなものとなっています。民主党政権になって初めての税制改正であり、大きなところでは扶養控除の一部廃止・縮小、中小法人の軽減税率引き下げの見送りや一人オーナー会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度の廃止等、注目すべき点が含まれています。


○中小法人の軽減税率引下げは見送り 
民主党はマニフェスト(政権公約)で中小企業の法人税の軽減税率引き下げを提唱していましたが、実際の減税は平成23年度以降に先送りされています。なお、平成21年度税制改正により、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得金額のうち、800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率は18%に引き下げられています。

○一人オーナー会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度を廃止 
平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されないことになります。なお、特殊支配同族会社の役員給与に係る課税はいわゆる「二重控除」になりかねないとの指摘があるため、個人事業主との課税の不均衡を是正する抜本的措置が平成23年度税制改正で講じられる予定です。

○中小企業の少額減価償却資産の特例延長 
中小企業者等が30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合、その減価償却資産の年間合計額300万円を限度として全額損金算入できる制度の適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。

○中小企業の交際費の損金不算入の特例延長
交際費等の損金不算入制度の適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。600万円までの90%相当額について損金算入が可能です。そして、交際費支出が600万円以上の場合、損金算入限度額は540万円になります。

○中小企業投資促進税制の延長 
中小企業者等が一定の設備投資やIT投資等を行った場合、税額控除(7%)又は特別償却(30%)ができる中小企業投資促進税制について適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。

○グループ法人税制の整備
企業グループの一体的運営が増加している中、課税の中立性や公平性確保等の観点から、100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等の損益の繰延や受取配当の全額益金不算入などの整備が行われます。なお対象法人は、連結納税制度を採用する法人以外の100%支配関係のグループ法人すべてとなるので注意が必要です。適用は原則的には平成22年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

○住宅取得等資金の贈与の非課税限度額の引上げ
直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置が講じられます。
非課税限度額(従前500万円)が、平成22年中に住宅取得等資金の贈与を受けた人(改正前の制度500万円と選択適用)は1,500万円、平成23年中の人は1,000万円に引き上げられます。なお暦年贈与の基礎控除(110万円)は従来通り適用できます。
なお、適用対象者は贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の人に限定されます。適用は平成22年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用され、その適用期限は平成23年12月31日までとなっています。

○扶養控除の一部廃止・縮小
年少扶養親族(扶養親族のうち、年齢16歳未満の人をいう。)に係る扶養控除が廃止されます。また、特定扶養親族(扶養親族のうち、年齢16歳以上23歳未満の人をいう。)のうち、年齢16歳以上19歳未満の人に係る扶養控除の上乗せ部分25万円(個人住民税は12万円)が廃止され、扶養控除額が38万円(個人住民税は33万円)とされます。この改正は、平成23年分以後の所得税及び平成24年度分以後の個人住民税について適用されます。

平成21年分確定申告のポイント・配当所得について

平成21年分の確定申告の時期が近づいてきました。申告を必要とされる方は、そろそろ準備をされているころではないかと思います。
平成21年分の確定申告のポイントについて、今回、配当所得をクローズアップしたいと思います。
 まず、配当所得とは株主や出資者が法人から受ける配当や投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。
 配当所得については、所得税15%・住民税5%が源泉徴収されることとなっていますが、平成23年12月までの上場株式等の配当等(発行済株式の総数等の5%以上に相当する数又は金額の株式等を有する個人を除く)については所得税7%・住民税3%の軽減税率が適用されることとになっています。
 配当所得は、原則として総合課税の対象とされますが、特例として、確定申告不要制度が採られています。従来、配当所得は、給与所得等と合算される総合課税を選択し、配当控除を受けることができましたが、高額所得者にとっては総合課税の選択は不利になり、申告不要を選択している人が多数でしたが、平成21年1月1日以後に支払いを受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税によらず、申告分離課税を選択することができるようになりました。
これにより上場株式等の譲渡損と上場株式に係る配当金との損益通算ができるようになり、この損益通算を利用して、配当から源泉徴収されていた源泉所得税の還付を受けることができるようになります。
ただし、すべての人が申告有利となるわけではなく、他の所得者の配偶者(扶養)控除の適用を受けている人は、配当所得を申告することによって配偶者(扶養)控除の要件を満たさなくなり、結果として他の所得者の税金を増やしてしまうことになってしまう等、申告する場合には慎重に検討することが必要となります。

平成22年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
昨年は16年ぶりに政権交代が行われ鳩山連立政権が誕生し、政治面でも経済面でも今まさに大きな転換期を迎えております。
企業の経営環境は、平成20年秋のリーマンショックによる世界同時不況から続く景気の低迷が底を打ち、徐々に回復傾向にあると言われております。
しかしながら私どもの関与先である中小企業は、円高によってダメージを受け、消費の低迷からデフレスパイラルに飲み込まれています。世界的に見ても日米欧が戦後初めてマイナス成長となり、失業率も増加の一途をたどっている。今年の新年は正にこのような厳しい向かい風の中でスタートしたわけです。
皆様経営者は不況を嘆くことなくまた流されることなく、不況を前提とした上で、企業環境が根底から大きく変わっていることを十分認識され、経営というものをいま一度見つめ直し、まず今自分に何が出来るのかを考えていくことが大切だと思います。
今年はある意味正念場です。過去の延長線には未来はありません。全く新たな観点から「ビジョン」を明確にし、目的を達成する為の「戦略」を立て、それを「経営計画」に落とし込み、当初目標に近づけるべく行動結果を逐一検証していく。そして、その過程でも「ビジョン」、「戦略」に誤りがないかを問い直し、問題があれば即時転換していく行動力も大切です。
私たちは皆様に協力し、一緒に歩んでいきたいと思っております。
今年は皆様にとりまして充実した年になりますように祈念申し上げます。


中嶌大会計事務所 所長   中嶌 大

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